日本人と朝鮮人(16)

九、大東亜共栄圏だいとうあきょうえいけんと朝鮮

突然の真珠湾攻撃より始まった大東亜戦争だいとうあせんそう(太平洋戦争)は最重要機密を知る(開戦前年の昭和14年新韓国皇帝候補と独立時期の伝達)一部総督府官吏そうとくふかんり戸惑とまどわせるものでしたが、内鮮一体ないせんいったい方針はそのままに本国東京の始めた戦争に引きずられていくことになりました。
独立準備と直近の戦争にはさまれた朝鮮の状況をよく表した「前進する朝鮮」もいよいよ終わりを迎えます。

南方開発と朝鮮

皇民こうみんの自覚 

大東亜の共栄圏は、われ等一億の手で、われ等一億の力、われ等一億の團結(団結)によってきずかれる。

このの一億という数字には半島の二千四百まんが極めて重大な一翼いちよくにな(担)っている。一億の中には二千四百萬の半島日本人が含まれている。
二千四百萬半島を加えて始めて一億日本になるのである。

これは断じて見落としてはならない事實(事実)であり、またわれ等もひとしく陛下の赤子あかご(こども)、一億の一人であるという自覚は、半島の人人ひとびとの最も力強い皇民意識であらねばならぬ。

内鮮はもともと一つのものであり指導者日本の大いなる主柱である。そして皇道宣布の前進基地として、また大陸作戦の兵站基地として、朝鮮はいまたくましい大股おおまたの歩みを続けている。

帝国の負荷ふかする大東亜共栄圏の確立の偉業は、すでに三十(余)年前、その第一歩を朝鮮に踏み出している。
今後の建設活動において朝鮮が常にその先陣を切って進むことは、光栄ある先蹤せんしょう(先例・最初の見本)にたい(対)する當然(当然)の責務である。

戦史驚倒きょうとう(おどろき)の赫々かくかくたる(かがやかしい)大戦果にともなって大東亜共栄圏の意義もすこぶ擴大かくだい(非常に拡大)されつつある。
特に広大な大南洋圏の包含ほうがんはその開発建設あげて帝国の指導にかかり国民の奮起ふんきと努力を待望する所のものもまた大きい。

pointこの文章は「前進する朝鮮」のめに当たるわけですが、いくつもの重要な文言もんごんを含んでいます。そして朝鮮は京城けいじょう朝鮮総督府の極少きょくしょうの官吏のみ総督府総監より口頭伝達された最重要機密事項であった、名目上朝鮮半島の独立になる「第二次新韓国建国計画」を知らなければ正しく理解できない物でもあります。

計画そのものは一期とあわせてのちにすることとしますが、このことが朝鮮の併合の真の目的であり、日本の掲げていた明治の「興亜主義」(アジアを日本が解放発展させる)より始まった昭和の「大東亜共栄圏」のテストモデル(実験)兼デモンストレーションモデル(見本)でした。

われ等一億の・・・ 戦争中「一億火の玉」など当時の日本の総人口約7200万人一億のという表現を使って言うのは朝鮮人2400万人日本人としているためです。このこと自体西洋植民地政策(地元民を自国民と同列とはしない)やナチスの政策(ユダヤ人排斥)とは違うことが分かります。
ひとしく陛下の赤子 陛下とは当時神格化されていた天皇陛下のことですから、日本民族と朝鮮民族は同じ神の民族ですよと言っていることになります。
内鮮はもともと一つのもの ちょっと前(併合したから)に一緒になったと言っていません。もともととは日本書紀に記されている神代かみよの頃からになります。
このことは、大変重要な意味を持っていて京城(現ソウル)の近代化も密かにこの日本書紀に沿う形で行われています。
指導者日本の大いなる主柱 興亜(アジアを開放・発展)の指導者として日本大東亜共栄圏を作ります、その働きの中心に朝鮮半島の内鮮人はいますよ。そのことこそが理想社会建設のかなめでありますよといっています。
建設活動に於て~光栄ある先蹤せんしょう 解放された各民族がすぐに自立出来るわけではありません。日本はその(インフラ工事・社会制度・教育システムの導入)のお手伝いをしましょう。その最初の例だった朝鮮、それを共に経験した内鮮人他の日本人の先頭に立ちアジアの発展に尽くしますということです。
神話の時代から日本民族と朝鮮民族とは血縁関係にある。故に手に手をとってアジアを解放発展させる戦いに挑まねばならない。

戦後教育だけを受けた人はこの部分が完全に消えた近代史を習っているはずです。
これが、GHQ 占領政策(連合国軍総司令部占領政策)以降消えているものになります。
その後、アメリカのにらみが消えても公の場においてこのことは触れられることはありませんでした。今日こんにちでも
当然ですが、朝鮮にいた日本人はこの方針に沿った授業や総督府・戦時下の団体等の式典の講話こうわを受け生活をしていました。

ですので、戦後の数少ない朝鮮から帰国した日本人の出版物をご覧になった方はお分かりでしょうが「現地では朝鮮人と仲が良かった、極端な差別はなかった」と書かれていることが多いのはこういうことだったからです。

別に太平洋戦争を神聖視していて今日こんにちの韓国の言い分を否定しているわけでもなく、朝鮮人を不当に差別しているからでもありません。
ましてや右傾化しているからでもありません。そもそも朝鮮戦争勃発ぼっぱつからぐに引き揚げ日本人にコンタクトを取り事態収拾に動いた岸信介や周囲で協力した実弟の佐藤栄作、堤康次郎、笹川良一等各氏の経歴を知れば「右傾化したから~」など事実誤認もはなはだしくジョークとしても笑えません。

point朝鮮から引き揚げた朝鮮総督府中央官吏だった方やご家族が健在の頃に開かれた集いにでも足繁あししげく通えば、時折出てましたので、どこかで話を聞きくことが出来たはずです。
思い出話になっていましたので、話してる当人たちは茶飲み話感覚になっていましたが・・・
不思議なことに学者も、ジャーナリストも全く姿を現わさないまま(個人宅だけでなく、普通にホテルで集まったりもしていたのですが)一人消え二人消え・・・今ではもう語れる人もいなくなってしまいました。
このことが先に挙げた「右傾化したから~」という出鱈目な意見が流布されてしまった原因であり、自分の足で、目で耳で事実関係をひたすら調査・研究する人に恵まれなかった日韓歴史認識問題の不幸でもあります

昭和17年(1942年)3月31日・発行ですので軍の検閲を通らなければなりません。
いかなる出版物も国の方針と異なれば即時発行停止処分のうえ関係者が厳しい処罰を受けた時代です。
その中にあって朝鮮総督府情報課長の名において書かれ出版されていることが大変重要な意味をもっています。
軍も始めからこれらのこと(独立も含め)に関与していたということです。


使命重大、前途洋々ようよう

かくて帝国の前途には一段と明朗めいろうなる多事多忙たじたぼうを予測されるが、中には南方新資源に對(対)する期待が過大にすぎて朝鮮の将来に極端に悲観的な見方を下し、またあるいはこれからの朝鮮はもうどうなったって大して差障さしさわりはないというような観測をする人もないではない。

これ等は勿論甚もちろんはなはだしく独断見當外けんとうはずれな考え方であって、帝国にける朝鮮はいわば増資によって拡張された本店の一部である。
どれだけ多くの支店や出張所が増設されたからとて、そのために本店が威信を失墜しっついし、あるいはあってもなくとも良い存在になるなど到底あり得ることではない。

いなむしろ、支店や出張所がふえればふえる程本店、特にその本店の中でも新機構の部分は多忙たぼうさを加える道理であり、朝鮮の場合も優秀なる出店にもたとえるべき南方共栄圏の拡大は、その兵站基地へいたんきち的性格の上に一層の重要性を付加ふかしつつあるのである。

南方の資源は無尽蔵むじんぞうであるといわれる。その無尽蔵な資源は、世界総産額の97%を占めると言われるゴムにしろ、また75%を占めるすずにせよ、その他鐵(鉄)にせよ、石油、石炭にせよ、何一つとしてさあお使い下さいというように何の手数も要らない精製品として存在するのではない。
原料の採取に始まってこれが製品となり、さらに我々の日常用品乃至ないし機械器具としてそれぞれの性能をもってあらわれるまでには、なお幾多いくたの労力と工程をなければならないのである。

そして豊富なる電力をようして将来的にもなお最も恵まれたる工業立地条件を有する朝鮮は、此の點(点)新しき南方資源工業化の要請に応えるべき好適の舞臺ぶたい(舞台)でなければならない。

最近にける急速なる各種工業の発達は、今日の南方資源の開発にまさに口を開いて待ち設けたるの形ということが出来る。
さら大東亜戦下だいとうあせんかける労務の給源地的性格については、もういはずもがなである。

すなわち悲観どころか、どの點(点)から見ても朝鮮の使命は益々ますます重く、朝鮮の前途は益々洋々ますますようようたるものがある。
朝鮮はここに三十年の準備期を終えて、その真價しんか(真価)、本領を発揮すべき絶對ぜったいの好機【それは精神的にも、また産業経済の分野に於ても】を迎えたと見るべきではあるまいか。

南方もとより重要である。しかし今日満州まんしゅう及びソ連ソビエト連邦に越境して北邊ほくへん(北辺)防備の重責じゅうせきを擔當(担当)し、大陸に接壌せつじょう(近いこと)して兵站基地へいたんきちとしての大任を完遂かんすい(やりげる)し、更に卓越たくえつする工業力をもって南方資源開発の最後の仕上げ地たるの要請に答える、躍進やくしん日本にになう半島の意義および使命はまことに(誠に)深大しんだいなりといわねばならぬ。

いたずらに南方のはなやかさにのみ幻惑げんわくされてはならぬ。如何いかに立派な支店、豪奢ごうしゃな別邸が出来ようとも、これによって本店、本宅が閑却かんきゃく(いい加減なあつかい)されて良かろう筈はないのである。

総力決戦の大東亜戦下にける半島の決意は、その二千四百萬2400まん、内地人であると朝鮮人であるとを問わず、半島に負荷ふかされたるの重大使命を自覚し、聖業完遂せいぎょうかんすいに全力をささげて御奉公のまこといたすにある。

一億一心は内鮮がまことに一體(一体)とならなければ大きな計算違いとなる。
二千四百萬を除外してはわが栄光ある一億は成り立たないのである。

この後半部分は「第二次新韓国建国計画」が総督府に告げられたあと書かれたものであることが分かりませんと、今一つ何を言っているのか理解しづらいと思います。

前進する朝鮮」の最後が、もう朝鮮はどうなっても差し障りはないあってもなくても・・・ネガティブワードが並んでいるのは、日本からの近い将来の切り離し(韓国独立)が朝鮮経済を負担したくない一部の本土(日本の東京)の人間の思惑もあってのことらしいと朝鮮側が本国の真意を疑っている面もあるからです。

本国のが朝鮮半島を理解し将来設計を立てているのか伊藤博文暗殺以降の不透明さがここにもあらわれています。
ですので南方の資源に浮かれ朝鮮が軽んじられないよう日本に向けて、いかに自分たちが有益な存在かをアピールしているのです。

point美辞麗句並べて朝鮮併合を自画自賛しつつも、いまひとつ日本(東京)の真意が測りかねるという朝鮮側の複雑さがこの一冊から見えます。
そして朝鮮側内地人の危惧は太平洋戦争が大敗北に終ったことを告げる玉音放送からのち最悪の形で現れることとなりました。